シャント治療

1.シャントとは
腎臓の機能が悪化してくると尿毒症や心不全となり、そのまま放置しておくと、致命的になる恐れがあります。腎臓機能が低下した状態を腎不全と言い、腎不全になると、血液のろ過ができない、老廃物がたまってしまう、電解質バランスが保てなくなるなど、様々な障害が起こります。このように腎臓が機能していない場合、行われる治療が人工透析です。具体的には、腕の血管に針を刺し、1分間に150~250mlほどの血液をとり、透析器にて血液を浄化し、再び体内へ戻します。これを3時間から4時間続けて行います。そのため、手術を行い動脈と静脈をつないで、静脈に流れる血液量を多くして、そこから血液をとる方法が開発されました。このつないだ血管をシャントと呼びます。
シャントのトラブルは再手術により患者さんを苦しめるだけでなく,適切な血液透析療法を困難にします。

シャントは透析ごとに血液を取り出す所と返す所との2ヶ所を穿刺されます。これを週に3回するため、1年(52週)では約300回穿刺されることとなります。そのため、シャントの血管は徐々に荒廃してきます。その結果、シャントの一部が狭くなったり、つまったりします。シャントの一部が狭くなると透析の血流不足、静脈圧の上昇、シャント肢の腫脹などが見られます。この時はシャントの造影検査などを行い、PTA(バルーンによる拡張術:風船を付けたカテーテルで狭いところを広げる)あるいは手術でなおすことになります。

また、つまった時は、シャント音やスリルがなくなり、腕が冷たくなります。このままでは透析ができませんから、緊急に手術をして治すことになります。どのように治すかはシャントの閉塞の原因、シャントの状態、残った動静脈の状態によって決めさせていただきます。その治し方については、このあとで述べます。

2.シャントの種類
<1>自己血管内シャント
皮膚の下で静脈と動脈を直接つなげます。基本的に内シャントはできるだけ手首に近い位置でつなげるのが良いとされています。理由はあまり腕の中枢付近でシャントを作成した場合、穿刺する箇所が限られてしまうこと、またシャントが閉塞してしまった場合、再びシャントを作成するのが難しくなるためです。血管の吻合(ふんごう)には、静脈を結紮し、切断した静脈の端を動脈に吻合する端側吻合と静脈の側面と動脈の側面を吻合する側側吻合の2種類があります。

<2>人工血管内シャント

前腕によい動脈と静脈があれば、それらを縫い合わせて作製する自己血管内シャントがもっとも良いものです。一般的にこのシャントは5年後も50%以上の患者さんで使い続けることができます。問題は両側とも前腕によい動脈と静脈がない場合です。この場合はやむをえず人工血管を移植してシャントを作製します。すなわち、どのようなシャントができるかは患者さんの動脈と静脈の質によって違ってきます。ほとんどの場合は術前の診察とエコー検査にて判断できますが、時には手術中に動脈や静脈が悪いことがわかることもあります。そのため、最終的には手術中の血管の所見によって手術術式を決めることとなります。
シャントを作る場合は、まず利き腕ではない腕に作ります。(透析中は穿刺されている腕はほとんど使えません。そのため利き腕にシャントを作ると透析中何かと不便です。)そのため、最初は利き腕でない側の前腕に自己血管内シャントを作り、これが使えなくなったら前腕の人工血管内シャントに変更します。これも使えなくなったら上腕に人工血管内シャントを作ります。上腕のシャントが使えなくなったら、対側の利き腕に移ることとなります。

自己血管に比べ血栓ができやすく、また感染症のリスクも高くなります。

3.シャントの形態

内シャント 動脈表在化 外シャント その他
自己血管 人工血管
1998年 91.4% 4.8% 2.5% 0.2% 1.1%
2008年 89.7% 7.1% 1.8% 1.4%

2011年の「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」より

このように、1998年と比べて人工血管内シャントが増えたものの2011年の時点ではシャントの多くは自己血管内シャントであり、人工血管内シャントは7.1%しかありませんでした。しかし、糖尿病性腎症の増加、透析導入年齢の高齢化、透析期間の長期化により、自己血管にてシャントが作成できない症例が増えてきており、現在人工血管の使用頻度はさらに多くなっています。

4.手術
<麻酔>
腕に作る場合は通常局所麻酔で行います。手術中は局所麻酔の痛みを除けば、ほとんど痛みはありません。手術後は、痛いときは鎮痛剤を飲んでいただきます。麻酔による合併症としてまれに呼吸抑制、血圧低下など重篤なものがあり全身管理が必要となることがあります。
<手術時間>
手術に要する時間は、自己血管内シャントの場合は1時間―1時間30分、人工血管を使用する場合は約2時間がおおよその目安です。抜糸までは2週間を要します。
<手術直後の合併症>
手術の最大の問題点は、作ったシャントがつまってしまうことです。このときには再度手術を行います。局所麻酔薬に対するアレルギーや術後の出血、創腫脹や感染も心配される合併症です。

 

5、日常管理
内シャントの場合、生活の制限はほとんどありません。しかし、シャントの腕は腫れやすいので指輪や腕時計は避けたほうが賢明です。シャントの腕に重いものをぶら下げたりもしないでください。また、シャントのある腕にけがをすると大量に出血する恐れがあるため、外傷には気をつけてください。穿刺をして透析をした日は入浴できませんが、翌日は結構です。シャントの感染を防ぐためにシャントのある腕を清潔にしておいてください。

 

6.PTA
シャントPTAとは、血管を拡張するための方法です。先端にバルーン(風船)のついたカテーテルという細い管を、シャント内に挿入します。そこでバルーンを膨らませ、狭窄や閉塞してしまったシャント静脈を拡張します。局所麻酔を使って行い、所要時間は30分ほどです。
PTAは切らずに針を刺すだけでできますが、再発することが多いです。そのため、繰り返し治療が必要となります。

自己血管内シャントの閉塞の原因としては、動脈と静脈の吻合部が狭くなったり、頻回の穿刺によって静脈が狭くなったりすることが一般的です。条件によってはPTAで治療することができますが、PTAで治療できない場合は手術にて治療します。前腕にまだ良い静脈が残っていれば、再度動脈と静脈を吻合してシャントをなおします。前腕に適切な静脈がなければ、人工血管を使った内シャントを作ることになります。
人工血管内シャントの閉塞の原因としては、人工血管と静脈の吻合部が狭くなることがもっとも多く、血栓除去術(シャントの血栓を掃除する)だけでうまくなおせないときは、狭いところをPTAするか手術になります。

 

7.その他
シャントに代わる方法としては動脈の表在化というものがあります。肘の所にある上腕動脈を筋膜の上にもってきて、これを直接穿刺するものです。動静脈を吻合したり、人工血管を使う必要はありません。また、手の血行障害や心臓への負担もありません。しかし、3-4年の穿刺によって動脈が瘤のようにふくれてしまうことが多く、これを手術して治す必要が出てくることがあります。シャントが作製できないような限られた患者さんで使われることになります。
この他に太い静脈にカテーテルという管を留置しておく方法もあります。これは一時的にはよい方法ですが、閉塞や感染が多く、長期間にわたり行うことはできません。すなわち、透析療法を長期に安定して継続的に行うためにはシャントが必要です。

 

8.シャントトラブル

<1>シャント感染
内シャントの場合は手術創の感染と穿刺に関連した感染があります。自己血管と人工血管を比較すると圧倒的に人工血管が感染を起こす率が高いことがわかっています。シャント感染が起こると、局所は赤く、熱を持ち、腫れ、痛みが生じます。早期ならば、抗生物質の投与でなおることがありますが、放置しておくと敗血症になり生命に危険が及ぶことがあります。人工血管が感染した場合は原則的に感染した人工血管を摘出します。
<2>シャント狭窄
シャントの血流不足、静脈圧の上昇、シャント肢の腫脹が見られた場合、狭窄を疑いシャントエコーまたはシャント造影を施行します。狭窄が認められればPTAあるいは手術が必要となります。
<3>シャント閉塞
血栓などにより、シャントが詰まってしまった状態です。詰まってしまうと血液は流れなくなります。この場合もシャントを拡張し改善します。
<4>スチール症候群
シャントを作った側の手の血圧が低下し、冷たく感じたり、痛みや痺れを伴います。悪化すると手指が壊死する恐れがあります。シャント作成後すぐに症状が出ることも多いです。症状が強い場合には、シャントの血流を落とすか、シャントを閉鎖し他の場所に新しくシャントを作ります。

<5>静脈高血圧症
シャントを作製すると静脈は次第に拡張してきます。このシャントの流出静脈になんらかの理由で狭窄、閉塞が生じると静脈高血圧を発症することがあります。静脈の圧が高まり生じる症状です。シャントが狭窄や閉塞すると、シャントが心臓の方に流れず、逆流を起こし、うっ血してしまいます。対策として病変部位をPTAにて拡張します。しかし、完全に閉塞していて拡張出来ない場合や、病変が硬くて拡張出来ない場合には手術にて治療します。
<6>シャント仮性瘤
シャント静脈に、瘤が形成されます。瘤には2種類あり、穿刺部にできる穿刺部瘤とシャント吻合部にできる吻合部瘤です。ある程度の大きさなら放っておいても問題はないとされていますが、徐々に大きくなったり、変色したり、痛みが伴う場合などは破裂する恐れがあるので、手術で瘤を取り除きます。

 

安定した透析を行うためにはよいシャントが必要不可欠です。十分なご理解をお願いします。

9.治療の流れ

1


検査 シャント造影検査、超音波で動脈と静脈の状態を確認します。

2


検査結果の説明 検査結果をもとに手術に関する説明を受けます。

3


手術、PTA 局所麻酔で手術をします。所要時間は30分から1時間程度です。

4


術後 1時間ほど休憩をし、その後シャント音を確認します。ほとんど日帰り治療となります。

10.治療費
シャント手術は健康保険が適用されます。

治療法 保険適用 治療費(3割負担)
シャント手術 約5~6万円

医療費控除
シャント手術を受け、1月から12月の間に本人、及びご家族が支払った医療費が10万円以上になる場合は、確定申告にて超過分が受け取れます。
任意保険の手術給付金について
保険会社により給付金を受け取れることもあります。詳細は保険会社にご確認ください。